singapore.jpg28-Aug-2012 ボードゲーム レビュー


シンガポールの商人

作者:Peer Sylvester
3−4人用
対象年齢:12歳以上

KSGame「ホールドアップ!!」

2011年のエッセンで発表され、日本に入ってくる前に日本語版の発売がアナウンスされました。
アークライトゲームズが版権を取得した日本語版「シンガポールの商人」です。

原題は「Singapore」というシンプルなものですが、ゲーム内容から付けられた邦題のようです。
このゲームは日本語版発売にあたって箱絵の変更が行われています。
理由は定かでは有りませんが、賛否両論あるようですね。
(元の箱絵は港に停泊する帆船のイラストです:参考リンクBGG

自分はユーロゲームに”舶来感”を求めていたりするので、元の箱絵のほうが好きです。
しかし、日本語版の箱絵も所謂萌絵というヤツではないので、許容の範囲内。
タッチも独特で、裏のゲーム説明まで同タッチの絵で表現されているところは感心しました。
でもカタカナは嫌です。

さて、ゲームではシンガポールを開拓する商人となります。
ラッフルズという偉い人が、シンガポールの開拓にあたって商人達に土地と引き換えに
開拓を委託したことをテーマとしているようです。

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ゲームボードはモジュラーボードとなっています。
海辺と初期タイルの書かれた起点のタイルと長方形(6マス)のタイルを並べて行きます。
1マス1マスが建物の建設予定地となっており、色が濃くなるにつれて建設費用が嵩みます。

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ここに、1ラウンドごとに人数+1枚表向けられる建物のタイルを建設していきます。
各人が必ず1つずつ行わなければなりません。

タイルには白と黒の2種類があり、黒のタイルは非合法タイルです。
このタイルを建設したり利用したりすると、バースト系のリスクが発生します。

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この建設を牛耳るのが悪名高き”ラッフルズプレイヤー”。
勝利点トラックで最下位のプレイヤーが、毎ラウンド自動的にラッフルズプレイヤーとなります。

ちなみにこの得点ボード、勝利点を減らす事に寄ってお金を生み出すことができます。
勝利点を減らしてでも建物を建てなくてはならないのです。

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ラッフルズプレイヤーは、全員分の(!)建設予定地を決定します。
建設予定地は、今建っている建物と隣接していれば何処でも良く、当然他人の建設予定地は高額の場所になるでしょう。

そして、表向けられている建物タイルを選択して建設を行っていくわけですが、
建物タイルを選択する順番はラッフルズプレイヤーから(!)です。

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建物を建てた後は、街道駒でタイル同士を繋ぎます。
手番中、追加で1金支払うことによって街道駒は何個でも置けます。
ただし、借金(勝利点をお金に換えて)して街道駒を置く事はできません。

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建物を建てた後は、自分の労働者駒を3マスまで移動して、最初に自分が居た場所も含めて、
3箇所までのアクションを実行できます。

ゲームが進むと労働者駒駒を2つにすることが出来、移動力とアクションを振り分けることができます。

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アクションは、商品のやりとりが主。
上記は好きな商品を黄色(麻薬)3つに変えられるというタイル。

商品のやり取りをしてお金を増やし、お金を勝利点に換えるタイルで勝利点を増やしていきます。
移動力は限られているので自分の目指すドル箱商売を少ない手番で行える様に建設していかなければなりません。

他人の建物を利用した場合は、そのプレイヤーに1勝利点が入ります。

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麻薬は他の商品よりも効率が良いですが、リスクがあります。
麻薬は主に、黒のタイルの建物を利用して手に入れます。
黒の建物を利用した場合には、袋からトークンを引かされます。
黒が出ているうちはそれが目の前に累積していくだけですが、白をひいたプレイヤーが現れると、
現在手持ちの麻薬と黒のトークン数を合わせた数が最多のプレイヤーは、麻薬を半分没収された挙句、
合わせた数分のお金を支払わなくてはなりません。

一旦このバーストにハマってしまうと、もはや麻薬でないと取り返せないという錯覚に陥り、
依存的に麻薬を集めてしまうのが面白いところです。

タイルは3つの時代に分かれており、後ろの時代に行く程得点源となるものが増えます。
タイルの供給ができなくなった時点で最も勝利点を稼いでいたプレイヤーが勝利します。

<以下、付属のルールブックだけでは足りないと思われる部分を補完します>
・最初の手番では、移動力1を支払って労働者駒を盤面に登場される必要があると思われます。
・手番では「建物の建設→労働者の移動&アクション」をプレイヤーごとに行います。
・商品キューブは無限です。
・街道駒は、今建設したタイル以外の場所にも置けると思われます。
・任意の商品を複数個の商品に換えるタイル等を利用する際、任意の商品はその後貰える商品自身であってもかまいません(黄色1個が黄色4個になる等)。

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TBGLゲーム会にてMOGさん(青)、流さん(黄)さんと。
COQは緑色。

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ゲーム開始当初、いきなり麻薬ガサ入れの餌食となり、
勝利点の全てを吐き出して最下位となるCOQ!

しかし、ここから”ラッフルズプレイヤー”をゲーム終盤まで担当し、
他人にはきつく、自分には甘いクソヤロウとして生きていく。

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あまりに”ラッフルズプレイヤー”が心地いいので、リソースを貯め、
決して他のプレイヤーの勝利点を追い抜かないように爪を研ぐ作戦。

終盤、爆発的に得点を稼ぐタイルがあることはわかっているので、
それまでにお金とリソースを貯めておく。
二度と麻薬には手を出しません。

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他人の建設予定地は当然最高値の4$。
自分は最安値の1$かつコンボを狙える地形が基本。

途中、労働者駒を1つ増やせるタイルは他のプレイヤーが絶対に歩いては来れないような
場所に建設して、自分だけが駒を増やす。

そして沸き上がる庶民の商人達の声
「死ねば良いのに」

ンッンーいい響きだ

MOGさんはCOQの右隣のプレイヤーのため、絶えず手番で残るタイルがクズばかり。
一応山札からタイルを引くというギャンブル救済要素があるが、
お金が必要なこともあり、殆ど機能しない。

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ゲームとは言え、流石にその言葉に心が折れそうになってきたころ、
ゲーム終了が近づいたところで貯め込んだリソースで一気に抜きにかかる。

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しかし、ラッフルズプレイヤーを1手番だけ明け渡したお陰で高額な土地に建設予定地を
指定されてしまい、最後の最後でお金が足りずにギリギリの2位。

散々憎まれたのに勝ちきれなくて無念。

自分は終始ラッフルズプレイヤーで楽しかったが、他のプレイヤーに申し訳ないゲームだった。
COQの右隣で苦しんだMOGさんは当然、最下位に沈んだ。

流:79 COQ:76 MOG:62

プレイ時間:90分

オススメ度:★★★★★☆☆☆☆☆

コンポーネントを見て、ルールの概要を読んだところまではタイル同士の効果のコンボや、労働者移動の制限によるジレンマなどを楽しみにしていました。しかし、ルールブックを読み進めるにつれ、”ラッフルズプレイヤー”の詳細が明らかになり、印象は次第に悪くなっていきました。

”ラッフルズプレイヤー”は毎ラウンド建設予定地を指定し、タイルを一番最初に選びます。当然、他人の予定地は僻地かつ高額な場所を指定し、自身の予定地はコンボが狙える安い土地を指定します。しかも、タイルは最良の物を選べるわけです。建設を拒否することはできないため、建設予定地の設定がゲームの展開を牛耳ることになり、あまりに”ラッフルズプレイヤー”が強過ぎるのです。

強過ぎるだけならまだ良いのですが、”ラッフルズプレイヤー”はラウンド開始時に最も得点の低いプレイヤーが担当します。しかもその後の手番はそこから時計周りです。

ユーロゲームの特徴の1つとして、下位に沈んだプレイヤーがゲームから脱落しないように救済するというシステムが組み込まれているというものがありますが、”ラッフルズプレイヤー”がこれを狙ったものだとすれば、余りに短絡的な決断だったと言わざるを得ないでしょう。

序盤で大きく出遅れたプレイヤーは、ゲームの大部分で”ラッフルズプレイヤー”を担当する事になります。つまり、最下位のプレイヤーがゲームの展開をコントロールすることになり、そのプレイヤーの右隣のプレイヤーは、ゲームを通して搾りカスのようなタイルを高額な土地に建設し続けるのです。意図的に勝利点を獲得しない事が可能なので、終始”ラッフルズプレイヤー”で居る事も可能です。

やる気を失ったプレイヤーがこれを担当したら、ゲームの展開は滅茶苦茶になってしまうかもしれませんし、ゲームから脱落してしまったプレイヤーがゲームの展開をコントロールするなんてキングメーキングしたい放題です。そこまでは至らないにしても、最下位のプレイヤーの救済措置をそのプレイヤー自身に任せてしまうというのは、システム上の大きな欠陥だと思います。こういったゲームの骨子をプレイヤー任せにして失敗するという欠陥を含んだまま世に出るゲームというのは、昔のゲームには良くありましたけど、最近では珍しいのではないでしょうか。

ホワイトゴブリン社は近年多作ですが、キチンと調整を行ってリリースして欲しいものです。このゲームも、”ラッフルズプレイヤー”の担当は自動的に移動し、タイル選択にのみ得点の順番を適用するなどすれば、十分にゲームとして機能したのではないかと思います。こんなことを続けていると、メーカーの信頼は地に落ちてしまいますよね。

また、ルールブックの書き込みが甘く、補足の説明が必要です。原著の段階での問題なので直接的にはアークライトのせいではありませんが、日本語版の発売を行うなら、実際に遊んで訳注の追加が必要かどうかくらいは判断して欲しいものです。原語依存のまったくないゲームをルールブックだけ字面通りに訳して終わりでは、存在価値を疑ってしまいます。箱の絵など変更している場合ではないのではないでしょうか。

調整次第では良作となった可能性も秘めており、期待していただけに余計に残念で辛辣になりました。作者は抜きつ抜かれつのデッドヒートの中で”ラッフルズプレイヤー”の担当者をめぐる争いを狙ったのかもしれませんが、うまく機能していません。逆に、なるべく得点を取らないようにしゃがんでラッフルズプレイヤーを取り合うことを意図したデザインだとすれば、90分もの間そんなことを続けるより、もっと面白いリソースマネジメントゲームが沢山あります。現行のルールではクソゲーの烙印に後ろから銃で狙われています。

救済措置ではないですが、日本語版はおまけのタイルが同梱されていて、少しだけお得です。










上の画像は駿河屋へのリンク。
送料込み3000円は確かに安い。

でも誰かに遊ばせて貰ってから
購入を決めても遅くないかも。